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『あした天気にしておくれ』岡嶋二人



我々は、セシアを誘拐した。馬は現在、我々の手によって、安全に確保されている。セシアの返還を望むなら、以下を考慮していただきたい。
二億円を要求する。
(『あした天気にしておくれ』より)



当歳馬のセリで三億二千万円という史上最高の値で落札された馬、セシア。鞍峰、東堂、都賀、岩佐の四人の男たちがそれぞれ八千万円を出資し、セシアの馬主となった。しかし、セシアを生産牧場から鞍峰牧場に移す時に事故は起きた・・・。

主人公の朝倉はセシアの馬主の一人である鞍峰の会社の社員。以前は競馬記者だったが、鞍峰に引き抜かれ、鞍峰が所有する十二頭のサラブレッドの管理を任されている。鞍峰牧場の敷地内でセシアを乗せた馬運車が急ブレーキを踏んだため、セシアが暴れ、左後脚を骨折してしまう。競走馬としては絶望的な怪我だった。このままでは、鞍峰が他の三人の馬主に損害を賠償しなければならなくなってしまう。鞍峰のためというのではなく、鞍峰牧場で働く者のために朝倉は鞍峰にある提案をする・・・。

競馬を知っていたら、終盤のトリックには早い段階で気付くかもしれませんが、とにかく最後の最後まで気が抜けないミステリーです。大体内容を忘れた頃に読み返すので、その度に楽しませてもらっています。ちなみにセシアという馬名は、アメリカの三冠馬セクレタリアト、シアトルスルー、アファームドの三頭の頭文字を取って名付けたもの。

あした天気にしておくれ』は、同じく岡嶋二人の競馬ミステリー『焦茶色のパステル』が第28回江戸川乱歩賞を受賞する前年の昭和56年に第27回江戸川乱歩賞の最終候補に残った作品。つまり岡嶋二人のデビュー作です。小説が書かれた当時の二百円券、五百円券、特券などと言う馬券が出てくるので、時代を感じるものの、作品全体には古臭さを感じません。

それほど多くの作品を読んだわけではないけれど、これまでに読んだ競馬界を舞台にした国内ミステリー(長編)で面白いと思えたのは、この『あした天気にしておくれ』と『焦茶色のパステル』。もちろん競馬ファンでなくても、ミステリー小説として十分楽しめる内容になっています。ただ、競馬ファンならより楽しめる内容になっていると思います。私の場合、小説の中にほんのちょっとでも競馬が出てくれば、それだけでちょっと得したような気分になるので、岡嶋二人の競馬ミステリーなんて、もうたまりません。

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岡嶋二人は、“二人”という名の通り、井上夢人(井上泉)、徳山諄一という二人の作家のペンネーム。つまりは共作。残念ながら今ではコンビは解散してしまっています。ウィキペディアで調べたら、競馬に精通しているのは徳山さんの方らしいのですが、その徳山さんはどうやらもう小説を書いていないみたいです。面白い競馬ミステリーってなかなかないので、本当に残念。

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七年目の脅迫状』はかなり昔から絶版状態で、私は読んだことがありません。『あした天気にしておくれ』と『焦茶色のパステル』も以前は絶版だったように思うのですが、今は復刊したのか普通に買えるみたいです。写真の『あした天気にしておくれ』の文庫は、何年も前にブックオフで探してようやく見つけたもの。
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